silentdogの 詩と昼寝

詩をおいてるばしょ。更新はきまぐれ。

「碗」のこと

 ちょうど一年前の自分の日記を見返していたら、映画をみた感想がかかれていました。滅多に書かない日記をつけるくらい、そのときの自分の受けた衝撃度は強かったです。新しいものや、流行には敏感ではないので、しばらくぶりに観た映画の中にみえた「新しさ」に、今はこうなっているのか、と驚いたのを思い出しました。

 

 映像の表現というのは、自分が知らないうちにどんどん新しくなり、進化しているのだなぁと思いながら、自分のつくる詩のことを振り返りました。表現方法も、かかれるものも、とても古く思えました。きっとどちらも、何かに拘りすぎ、がちがちになってしまったのかも。方法と、かかれるもの、どちらかでも自分にとって新鮮なものを取り込めば、もっと楽しく作れるだろうかな。

 

 そんなことを考えるのですが、自分というのは中々変えられないもので、同じようなものを、同じようなかたちで仕上げて、すとんと落ち着いてしまう。その流れからの抜けられなさに、自分でも呆れたりします。自分の中で定型みたいになっている流れを、ちょっと変えてみたいものです。変化することの大変さ、変化しているものの凄さを、しみじみと感じます。

 

 「碗」はちょうどその映画を観た頃に書いたもので、書いたことも忘れていましたが、同じ気持ちを今ももっています。楽しさをもとめて色々試してみたいな、と思っているので、自戒と言う程でもないけど、載せておこうと思います。

あたらしい方法

をさがすようにして、さまよい

さがしあてたように、一つの碗を手にする

 

テーブル

 

しずかに碗を置く

 

そそいでも崩壊しない強度なら

わたし自身も持ち合わせているはずなのに

ほころぶ箇所がいくつでも見つけられる

もう、間に合わせでは、いけなくなってしまった

 

無色透明でも

重さはごまかすことができない

わたしは、とことばを発すればいくらでも、ごまかすことができた

けれど重さは、ごまかせない

 

四度も五度も煎じた茶から抽き出される色彩よりも

もっと淡い

それでも、それは思想といえるの?

わたしはそそぐ

この碗は壊れない

水と器のはだがすれて

川のような音がきこえる

 

 

morning dew

 

 

Swan and Morning Dews。

静かな曲。

 


一音鳴らし、もう一音どこかで鳴れば、音楽になるのだと思う。

白鳥のくちばしから垂れる水音と、どこかの青葉からおちる露。

それだけで。

 


わたしたちは眠りの底からゆっくりとあがってゆく幕を持っている。

ひとつの音となるために目覚めて、音楽とは似ていない日常の中に入ってゆく。

 

 

そしてつめたい空気の中を通過するだけで、半音下がったりする。

 


浮遊する金属板をふむ。

ウォーターリリーガーデン。

きしむ舟。

遠くでひきずられるロープのにぶい音。

 


だから言ったじゃない。嵐が来るって。

きっと飛ばされる、舟や、波や、花々は。

 


固定されていないものだけが

ふわりと次の時間へ進むのだと思う。

飛ばされないわたしの日常を留めているボルトを

いそいでゆるめる。

その朝。

 

らせんが回る音。

鳥の声。

次の音。

それは、わたし。

 

 

なぞなぞ

 

ビリヤード台の上の、つやのあるボールの内部のよう

 

きみたちはいつも、わたしと同じ言葉を話さない

その身体に流れているのは身体だから

残酷なふりをしてきみたちを切っても

同じ断面ばかりを見ることになるのだ、わたしは

 

 

森の中で拾った鉱物のよう

きみたちはいつも、わたしとは違う静かさをまとっている

 

誰かが話す声は線を引いたように抑揚がなくて

別の誰かが話す声も同じように抑揚がないのに

会話するとうなりが聴こえる

波形を耳で聴き取って、わたしは話しかける

けれど鬱蒼とした暗がりを

突き抜けて出て行ってしまう、わたしの言葉

 

 

おしゃべり

花をあげる
泡立つ水をあげる
春をあげる
ぬぎすてられた甲羅も
開かない傘も

 

わたしたち
の中にあなたも入っていることを
みんなが忘れそうになっている

 

火曜日をあげる
眠りをあげる
熟しすぎた苺
大気の中の香り
今おちた糸くずもあげる

 

とてもちいさな夢が
どこからともなくやってきては
わたしたちをさいなむ

 

掃除して
ちらばった服をかけて
椅子のほこりはらって
窓あけて
それでも足りないあなたは
もっと、窓をあける
出てゆくときは
測らなくては
でも
誰も単位を知らない

 

あなたが移動している
その空白を埋めるには
手当たり次第
そこへささげなくては
ささいな
ささいなものを
たくさん

 

花をあげる
泡立つ水を
気泡にゆれる水草
うみつけられた命を
それから
それから

 

 

落涙のとき


世界中の匂いが

花や果実で占められるときがくる


世界中の泥が

ぬぐいさられるときがくる


光、


光がおとしてゆく影

その重みを

土は受け止める


かがやかない

片側の真実を

受け止める


わたしは軽やかではない

明るくもない

脈打ち、にぶい波を放ち

涙が流れて

土にしみる

落ちたその痕は黒く

黒く

より黒く


そして

世界中が花の香りで占められた今日よ

 

 

棲息区域

 

もう旅はしたくない、と思った

 

サンクチュアリ

蓮のかおりがすこし漂っている

 

誰かがさしのべる手のひらは

あたえられる権利のように

まぶしく見える

 

でも・・・

 

「旅はいいものだよ」

 

でももう旅はしたくない

からだにくみこまれたルートがある

空虚で機械的な道だけれど

この身を委ねたい

 

ロータスイーターのいる池

おいていかれた鳥の一匹と

水に映る満月をながめている