silentdogの 詩と昼寝

詩をおいてるばしょ。更新はきまぐれ。

箱庭神話

町のはしまで

わたしは早々にわたしから分かれて右に曲がった。わたしは角をまがるたびに、別れを告げて分裂した。気まぐれに曲がり、その度に意志が純粋になるもう一人のわたしを背に、もやもやしながら歩いた。 町には角が無数にある。方眼紙のような町に生きるために生…

この庭の歴史

薔薇によく似たかたちの人々もやはり争いあうらしいのだわたしが見たときはすでにもっとも薔薇らしかった第一世代は滅び第二第三世代の世代間戦争の終焉間近であった第二世代たる薔薇にやや似た人々はのちの世をいきる人々の根を自分たちに導入して生き繋ぐ…

出現

わたしは 命を脱いで 腐敗していた 土とともに島となるまでの過程を たどろうとしていた 火が焚かれ 火がきえた するとわたしがきえた いま、静かな灰がある たましいのない夜のなかに 音がなだれこむ たましいのない夜のなかに 誰か 火を焚く 消える しかし…

ファイン

わたしたち 沸点が似ているけれど ほんとうに少しだけ わたしの方が低いからこんな陽気な日は先に蒸発し始めるのです耳の中がゆだちはじめるとあなたがまだ穏やかに器のなかにくつろいでいるただそれだけのことが音になって聴こえてくるのです わたしは先に…

いき、うた、それから、かぜ

弧をえがく歳月を 巡り続ける ひとのかなしさ わたしの抱える罪も かなしさの一部分だ だから 声高に宣言するきみらのことを信じずに この一瞬をいきるための あたらしい呼吸法や 新しい文章を さがしていた それは蟻や鳥のなかに あるかもしれず 樹脂や鉄や…

ヴァーチャルマリッジ

仮想の湖で 弟は釣りをしている 詐欺師たちのいるフィールドから離れた うつくしい湖畔の町 小さな家を構え 動かない波の中に 糸を垂らしている 釣った魚を近所の魚屋にうりつけて 生計を立てている 「それが幾らにもならず苦しいので 魚屋の男と結婚するこ…