silentdogの 詩と昼寝

詩をおいてるばしょ。更新はきまぐれ。

ファイン

 


わたしたち
沸点が似ているけれど
ほんとうに少しだけ
わたしの方が低いから
こんな陽気な日は先に
蒸発し始めるのです
耳の中がゆだちはじめると
あなたがまだ穏やかに器のなかにくつろいでいる
ただそれだけのことが
音になって聴こえてくるのです


わたしは先に気体になじんで
かたちから解放されて
まずは北をめぐります
ぐるりと旋回してもどってくると
ようやくあなたの腕が蒸発しきるのです
わたしはだから暇をもてあまして
今度は西をめぐります
するとようやくあなたの上半身が
わたしにも混ざり始めるのです


わたしたち
ちょうどいい高度を保って
東をめぐります
それから午後二時になるまで時間をかけて
南にゆき、昼寝どきの気体のなかにとけるのです


あなたの足が結露するように現れると
わたしも重くなりはじめます
あなたの肩が現れるころ
わたしの足のつまさきがようやく
土を踏むのです
けれどそんな小さな差に気づかないほど
わたしたち笑い上戸で
本当にこんな陽気な日は
笑いがとまらなくて、とまらなくて