silentdogの 詩と昼寝

詩をおいてるばしょ。更新はきまぐれ。

この庭の歴史


薔薇によく似たかたちの人々も
やはり争いあうらしいのだ
わたしが見たときはすでに
もっとも薔薇らしかった第一世代は滅び
第二第三世代の世代間戦争の終焉間近であった
第二世代たる薔薇にやや似た人々は
のちの世をいきる人々の根を自分たちに導入して
生き繋ぐことを考えていたようだったが
新しい人々はそれを拒否して自由に
空の方向に上昇していきたがり
根をもつことを拒否してふわ
ふわふわと浮上したがった
求めることと拒むことの間に
埋めようもない真空ができて
そこに沢山の死骸が落ちてゆくのを見た
わたしはだから
春ふくかぜのあたたかさのなかに
彼らの塵、芥を感じるのだった
かれらは世界の淵を降りて
もう一つのコミュニティを作りたがる
わたしの鉢の中の阿鼻叫喚に
生き疲れたなら
そうだ自由にこの土に
這い落ちて、つたのばしてゆけばよいのだ
いずれその指の先から
アンコールの寺院のように夕暮れに
かがやきそびえる街を
延々と建造するだろう彼らの
次の戦場は
この庭なのだろうけれども