夜の魚
静かにひきあげると
朽ちた水底の匂いがした
完全武装をしているのに
武器の先端でおきていることの味を
嘗めたことがない
わたしの仕掛けた罠のまわりに
なまぐさい喧嘩がおきて
そうして最後にはばをきかせたのが今
クールボックスの
暗い水の中にいる
もうすぐ夜が終わる
なぜなら朝の匂いがするからだ
完全遮蔽の箱の中には
その匂いも光も入らない
夜に釣られ夜に閉ざされ
夜に殺される魚の
身体の冷たさを
わたしは帰りの車の中で考える
コンビニエンスストアに寄って
珈琲を買って
明け方の霧を見ながらすする
そのかたわらの
かれの静かな勝利の
うたが満ちている場所、
その温度も伝わらない、わたしの、
この場所