silentdogの 詩と昼寝

詩をおいてるばしょ。更新はきまぐれ。

また冊子をつくりました。

f:id:silentdog:20160430125200j:plain

 

こまつ町家文庫さんの「となりの本屋さん」というイベントに是非とも参加したくて、

参加したさのあまり、冊子を作ってしまいました。

 

珊瑚色の表紙にしました。

ちょっと粗末なつくりですが、

手にとってくださる方が一人でもいらっしゃるといいな。

クロージング・タイム

 

次から次に丘にあがってくる人たちが

サーフボードを立てかけては去ってゆく

わたしはスプーンを数えながら

同時に色とりどりのボードの数もかぞえている

 

注文と

作成と

給仕のくりかえしは

波のよう

寄せては返す

 

リズムをくずさない彼女の

あるく軌道のとおりに

時間が進んでゆく

けれど

今日という日が

二十四時きっかりに

終わるとは

けっして言わない

 

測れないものを測るような

遠浅の海の音を聴いている

 

植物のような夜と

白砂に覆われた道、

人々が残したものとともに

 

 

日かげから日なたへ

 

 

駅からでてすぐの交差点

横断歩道のこっちがわに祖父がいた

うしろ姿だけですぐわかる

人の往来のなかで

ならったこともないのに詩吟を

 

ほんと、なんで詩吟なんか

でもその昔やってたのかもしれない

だってインコを飼って可愛がってたってことも

ついこの間まで知らなかったくらいだ

 

かわいた風にほこりが舞う

かすれた声をはりあげてるのに

だれもふり返ったりしない

なんかすごく、ものがなしい

その時点でもまだ

ゆめだと気づかなかった

 

日かげから日なたに

あっちには若いひとたちが次々に入っていくカフェがある

何うたってるんだろう

じいちゃんの声で再生されている詩は

この世のどこにあるんだろう

そんなこと考えてて

目がさめてもしばらくの間

なにから調べたらいいか、とか

この世の広さに圧倒されていたんだ

 

 

あたらしい冊子にむけて

f:id:silentdog:20160213172724j:image

 

 詩をつくるペースが、より遅ーくなっているこの頃ですが、か細く続けております。そして、某運営スタッフを今年も継続してやっておりまして、案内チラシ設置おねがいのため、「こまつ町家文庫」さんにうかがいました。

 こころよくチラシ設置を引き受けてくださったお店の方から、「中にあがって見ていってくださいな」と言われて、うきうきと店内を散策。古い町家のなかに本の要塞が仕込まれたようなお店で、冒険好きには探索し甲斐のある空間です。

 古本迷路の一角に、手作り本のスペースがありました。どれも一点もののような、手のこんだものばかり。マッチ箱くらいの大きさの本や、色彩の雨がこぼれおちてきそうな絵本、フェルトでできた本。みんな、なんて想像力ゆたかなんだろう。手作りすると、作る人の個性がきっちりと出るんだな。

 5月に手作り本屋さんというイベントを開催するとか。このお店で自分の作った冊子を読んでもらえるなら嬉しいなぁ。参加してみたいな、と考えているところ。

 

 ところで、店内で偶然にも、昨年の文学フリマ金沢でブースがお隣だった「こころあそび」さんと再会。ちょっとしたミラクルに嬉しくなりました。6月にまたお会いしましょう、と手を振ってきました。

 ※こころあそびさんの豆本はこちら

 こころあそびのギャラリー | ハンドメイド通販・販売のCreema

で見ることができます。

 

  宣伝しに行ったのに、影響されまくって帰ってきました。あまりに作品をかくペースが遅いから今年は無理かなと思っていたのですが、「やっぱり新しい冊子、つくってみようかな」と前向きになった一日でした。よし。次の表紙はピンクにしよう。

 

 

つれてゆけない

 

 

世界があいしているのは

石だけなのに

 

わからずや

きみのその手にある

深紅の爆やく

なんて、なんて柔らかい時代の手なの

永遠についてなにも知らない

それなのに永遠を約束するとか、うたってるものを

つかんでる、いつか崩れる肉になる手で

着火して

いきおい

はじけとぶ

体の中の骨

世界の骨は石なんだ

破壊される

つめこまれた感情の散弾がうちぬく

そのあとかたを

だまってつれてゆくんだ

世界は

だれもつれていかない

ただ石だけを

無言でつれていくだけ

それなのに

それなのに、

きみのやわらかいその手は

 

 

 

冬の野

 

守銭奴といわれてもいい

風のよく通るみちをあるき

行きすがら

人をだましたり

獣を撃ち殺して剥いだり

かねになる悉くを

やってきたのに

なんの理屈でこの身を飾ろう

そうではないと

どの口が言える

どのつめの先からも

血が噴き出している

岩肌を引っ掻くようにして

かき集めたけれど

膨大な足りなさに焦燥している

その空虚さのむこうがわから

ながれてくる風が

するどく冷たくわたしの体に刺さる

このかねで

つながりうるかぎりのつながりを

一身にあびている

いまこのときも

身ぐるみ剥がれるときは

近づいてきている

おそろしい

おそろしいことに

わたしは何も得ていない

得ることは得がたい

失うだけ失ってからはたと気づく

だというのに、何をそんなに溜め込んでいるの?

それが守銭奴といわれる所以じゃないか?

そういわれてもしかたがない

 

 

こずえ

 

 

双眼鏡はふしぎ
ふたつのレンズをのぞくと
遠くにひとつ
鮮明な領域をもつことができる


だれにも知られないように
とても早い朝に
わたしは森にでかけていって
観測小屋にはいって
そらにひらけた木々の梢をのぞく
わたしのための領域に
何かとびこんでこないだろうか
息をひそかに
けれどこない
ただ、甘い色の光でいっぱいの楕円の中に
透明に風にゆれる、
だれにも笑われない場所でただゆれる、
青枝がうたっているのを見るばかり