天狼のある部屋
あおじろくもゆる焔は
人々がそれを幾千度、と話すとき
あのあおざめたくちびるの温度と、どのあたりで平衡するだろう
ふるい冷蔵庫がごくりとのどをならしている
これほどまでに冷えた部屋は星のよう
拡散しない冷たさは、硬いと言っていい
温度計を手に鉄塔の上から透視すれば
今日この町は星図のようだろう
なかでもひときわ輝くのは
天狼のページが開かれている、この部屋に違いない
37度近い体温のわたしの末端がもえるように冷えている
乾く喉のために水をくむ
このぬるさは闇でも光でもない
広大な真空そのものの感触
*
ときどき、自分の好きな詩を読み返します。
「天狼」は本当に美しい詩だと思います。今月、鈴木漠さんの詩集をあらためて読み返していたのですが、新しく発見することや、初めて理解できたこともありました。ずいぶん前に古本屋で買った連句集も、ようやく読みたいと思うようになりました。
歳をとったせいなのかな、と考えています。