ヴァーチャルマリッジ
仮想の湖で
弟は釣りをしている
詐欺師たちのいるフィールドから離れた
うつくしい湖畔の町
小さな家を構え
動かない波の中に
糸を垂らしている
釣った魚を近所の魚屋にうりつけて
生計を立てている
「それが幾らにもならず苦しいので
魚屋の男と結婚することにした」
繊細な領域にすむ弟よ
昨日今日の
ほんとうの収支は
デスクの上にふんわりと重なっている
苦しさはどこまでも
りくつづき
だが秋の空も同じように広く続いているだろう
お前の魚のたかく売れる日は
天を高く
婚礼の日は
二羽の鳶をはなつ
それをわたしからの仮想の祝福としよう