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silentdogの 詩と昼寝

詩をおいてるばしょ。更新はきまぐれ。

靴選び


靴を買うとき
何を重視するかは人によるだろうけど
わたしならヒール重視
針のように尖って硬く
凶器のようなものを選ぶ


ところで
わたしたちは去年
社長に逃げられた
あんなに仲良くやってきたのに
ある日重篤になり
面会謝絶になり
その後行方しれず
そうかと思ったら
いきなり警察が入り込んできて
色んなものを有無を言わさずもってった
わたしたちには送金システムが
命より大事だったのに
それも持ってってしまった


社長の息子は
父親が「行方知れず」になったっていうのに
探す気配もない
あいつはケチで
システムを失ったわたしたちに
代替になるものを何一つくれなかった
ジュラルミンケースのひとつでも買ってくれたら
今でもあいつを許してやるのに
ってみんなで笑い合ってる


とりあえず白羽の矢が立ったのは
わたしだった
毎日の送金ができないから
小切手と現金をもって
銀行を渡り歩く役
クリック一つで飛んで歩く数字を
わたしはみんなから託されて
みすぼらしいナイロンのバッグに入れて
カツカツ道をあるく


わざとぼろぼろのパーカーと
ずるずるのスカートで
ジュラルミンケース?何それ
使い込んだポーターなめるなよ
貧しそうに歩いて
三億くらい軽く携帯してやる


でもまるで大金を持ってないみたいなふりをしてても
何かとすれ違うたびに怖い
体当たりされたり
背後から羽交い締めにされたり
いくらでも何パターンでも思いつく


凶器をもたなきゃいけない
でも殺傷能力が高くてはいけない
相手がうめいて
周りがざわついて
空気がひるむくらいの時間を稼げる程度の
武器
投擲突撃流し斬り
あまたの攻撃パターンに対応できる
そして裸足で逃げるんだ


だから
シューズショップで真剣に
慎重に時間をかけて選ぶ
どの靴がふさわしいか
わたしの武器として
だからヒール重視


みんなにたくされた数字があるし
社長はもう戻ってこない
警察は返してくれない
ぜんぶだめになるまであともう一息の
誰も守ってくれないわたしたちの
大事なものを運びとどける
自分の命の重さと軽さが分離して
引き剥がされそう
でもそんなそぶりみじんも見せないで
颯爽とあの界隈を渡り歩くんだ