silentdogの 詩と昼寝

詩をおいてるばしょ。更新はきまぐれ。

星をふむ日

レテ’リーリでは雪の代わりに 数字が降ってくる しろい つめたい冬の路地で 数学者たちが 昆虫採集のように掬い集める 新しい条例が公布されると ひとりびとりの市民に またひとつ 代数が追加される くるしみは 理想のなかにさえもありつづけるもの 木枯らし…

長い夜遊び

おわらない夜にする賭け事は 滅びた国のうしなわれた勝利を 追い回すようなもの 順繰りの敗北が 波形となってあらわれる 一千と二夜と永遠 うみがある くらいうみ 死んだ人たちの 足音がゲームの本質をつらぬく 不謹慎だが 通貨は清浄でうつくしい そして真…

ロストテクノロジ

統率者につらなる家系は途絶えてしまった だれもいない管制室 艦内に 古い時代の叙事詩が満ちて 息をするたびに未来が見えなくなる 最後の主君は 日誌、星図、二十六の星系に関する資料とともに 永遠に艦長室で眠っている すばらしい施錠システム それがわれ…

キ・プリピア港にて

寄港した先キ・プリピアの街に降りて街行く人びとの匂いを嗅ぎたいと思った港の周辺には生鮮食品市場が多いのはどこの星も一緒なのだろうくすんだ赤い看板の下に人だかりができて大きな生き物の死体を解体しているらしいのが見えた腹をさき新鮮な内臓を取り…

ためらい

恒星間飛行のたびに生命が鉱石に近づいてゆく 大きな問題が横たわっている 数回の飛行のあと 通信する相手を失った そしてさらに数回の飛行ののち とおく淡く星雲をながめた ダクトの中を何かが通っていった 冷たい通路をわたしはひとり歩いた わたしにとっ…

ブラッスリ・ノヴァ

四時になると かれらのうちで配膳係とされるものが しずかにやってくるのだった 錫の反射光をもつフォークを 船首の方角から船尾の方へ向かって 等間隔においてゆくのだ たん たん たん たん カアリヨ川を渡るよりも長いテーブル と食堂住人たちはよく笑った…

距離のない道

わたしをさらった かれらが ひとつひとつの要素となって けれどささやかな構造でしかない通路を わたしは南へすすんでいる わたしを失った土地へは こうして向かうものだ ゆれる触手が ゆれる かれらの弱いひかりはくらく わたしの行くてはみえない だが 八…