silentdogの 詩と昼寝

詩をおいてるばしょ。更新はきまぐれ。

かたむく天秤

水温

コップ一杯の水が わたしのいない部屋の中で 少しずつ冷えてゆく 冬 長い旅をしたらいい、と言われて わたしはでかけたのだった 時がたてば 呼吸しない室内も いきをしはじめる たとえば セキレイの走る足音 木の葉が風にすれる音 隣人が去ること 家屋が崩れ…

恒久過疎地域

海底にある火力発電の炉が美しい くらい水の奥から透過する火のゆらぎ きみらは 新しい土地のように、町をあるく 若い者はみな都市にでてゆき 老人ばかりが残っていることを 恥ずかしそうに言う さみしい岬に腰をおろし 用途がわからないエネルギーの みなも…

靴選び

靴を買うとき何を重視するかは人によるだろうけどわたしならヒール重視針のように尖って硬く凶器のようなものを選ぶ ところでわたしたちは去年社長に逃げられたあんなに仲良くやってきたのにある日重篤になり面会謝絶になりその後行方しれずそうかと思ったら…

レプリカ

わたしたちは ときおり修復のために 巡礼のような旅に出る みちみち ゆるやかに回復するからだ からだの奥に 水も声もたましいも 灯らない場所がある 樹脂の血 樹脂の精神 あいそう あいされようとして 築かれてゆく ささやかなかたちも ほんとうは 世界中に…

イン・ザ・マネー いい漁場にたどり着いた気分だ ここにいると遠くの人の焦りや志が入り交じるのが見える 岸辺で昨日本を読み終えた航海術は体得するものだとセイルは言うかれの伝統的な技術はある時期粉砕して世界中の人々の心の中に散らばってしまっただか…